事業内容

HGF医薬品の実用化を目指す創薬バイオベンチャー

私たちは、難治性疾患、すなわち「症例が少なく、原因不明で、治療法が確立しておらず、生活面への長期にわたる支障がある疾患」に対する治療薬の研究開発を目指す大学発創薬バイオベンチャーとして設立されました。

当社はすでに、組換えヒトHGFタンパク質を医薬品グレードで製造することに成功し、脊髄損傷急性期、声帯瘢痕、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、急性腎障害を対象に臨床試験を実施しています。こうしたアンメット医療ニーズの高い難病を突破口として、HGF医薬品をその他の臓器疾患にも適応拡大してまいります。

組換えヒトHGFタンパク質の臨床応用の可能性がある疾患

HGF(肝細胞増殖因子)
  • 腎臓
    急性腎障害・慢性腎不全・腎移植・糖尿病性腎症
  • 肝臓
    急性肝炎・劇症肝炎・肝硬変・胆道閉鎖症・脂肪肝・肝移植
  • 心臓・血管
    血管障害(閉塞性動脈硬化症・血管再狭窄防止等)・心筋梗塞・拡張型心筋症
  • 神経系
    ALS脊髄損傷急性期・脳梗塞・パーキンソン病・ハンチントン病・認知症
  • 肺・気管支
    慢性閉塞性肺疾患(COPD)・肺線維症・気管支喘息
  • その他
    皮膚潰瘍・声帯瘢痕・炎症性腸疾患・角膜損傷

赤字は当社が現在医薬品の開発をしている疾患

当社の特徴

01レイトステージ再生創薬バイオベンチャー

  • 希少疾病を対象に自社開発を推進
  • レイトステージのパイプライン
脊髄損傷急性期
第Ⅲ相試験終了
希少疾病用医薬品指定*
*指定番号:(31薬)第442号
声帯瘢痕
第Ⅲ相試験実施中
ALS
第Ⅱ相試験終了
追加解析実施中
急性腎障害
第Ⅰ相試験終了

02HGF再生治療薬のプラットフォーマー

  • 組換えヒトHGFタンパク質:ファースト・イン・クラスの開発シーズ
  • 医薬品としての製造・量産体制を確立
  • 多くの疾患への適応拡大による成長
    米国クラリス・バイオセラピューティクス社への原薬供給により、同社は神経栄養性角膜炎を対象に第Ⅰ/Ⅱ相試験実施中

当社のビジネスモデル

当社は、対象疾患や提携先に応じてA、B、Cを組み合わせたハイブリッド型の事業モデルを志向しています。その中でも、臨床試験の成果をより確実に医薬品として社会実装するため、自社での医薬品製造販売承認申請を行うことを基本方針とします。当社の臨床段階のパイプラインについては、脊髄損傷急性期と声帯瘢痕はAとBのハイブリッド(自社開発と販売提携)、ALSと急性腎障害はBによる事業化を目指しています。また、米国クラリス・バイオセラピューティクス社への原薬供給はCに該当します。

また、開発については一般的な新薬開発プロセスに従って実施する必要がありますが、難治性疾患に対する治療薬の開発を実現するために、以下に示すようなプロセスを実施しています。

① 基礎研究

医薬品の候補となるシーズ探索は長期の研究期間が必要である上に、この段階で候補が見つかっても医薬品として成功する確率は非常に低いことがわかっています。当社では、基礎研究として、組換えヒトHGFタンパク質の新規適応症の探索及び新規候補品の探索を行っていますが、大学との共同研究において専門的な知識を活用することにより、成功確率を高めるよう基礎研究を進めています。

② 非臨床試験・製造

非臨床試験や製造については、開発業務受託機関、製造受託機関等の専門技術を活用することにより、迅速に進めています。また、この開発段階では膨大な支出に対する収入が得られないため、公的資金(助成金、補助金)を活用することにより、自社負担を減らし、経済的なリスクを低減させています。

③ 臨床試験(第I相試験、第II相試験、第III相試験)

患者数の少ない難治性疾患では、疾患の原因も病態も明らかでないことがあり、臨床試験の評価項目の設定や症例の選定等が難しいとされています。当社では、大学との連携により、難治性疾患に対する専門的な知見を集積し、小規模で成功確度が高い評価項目を策定し臨床試験を実施しています。臨床試験の一部の業務については、開発業務受託機関に委託して品質・開発速度を確保するとともに、臨床評価や解析については、専門病院及び大学病院の医師と連携して科学的な質を高めています。また、大学病院等が公的資金を確保し、臨床試験(医師主導治験)の実施を希望する場合には、治験薬及び科学的な情報・知識を提供して治験推進に協力し、成果の独占的な利用許諾を得ます。

④ 承認申請・許可

臨床試験の成果をより確実に医薬品として社会実装するため、自社での医薬品製造販売承認申請を行うことを基本方針とします。難治性疾患を対象として開発しているため、POCが得られた後には厚生労働省の「希少疾病用医薬品指定」を受け、開発費用の助成、優先審査の活用などにより申請までの業務を加速することが可能です。また、「条件付き早期承認制度」「先駆的医薬品指定制度(旧 先駆け審査指定制度)」等の制度を活用することにより申請・審査に係る時間を短縮し、早期承認を目指します。

⑤ 販売

難治性疾患は高度医療機関において治療が行われるため、開発した医薬品の取り扱い施設の数が限定されます。従いまして、通常の医薬品のような大規模な流通販売網の構築が不要となります。また、競合する医薬品が少ないことから営業活動に大きな費用をかける必要がありません。当社が医薬品製造販売業の許可を取得し、医薬品卸売販売業者と提携することで、必要な場所に必要な医薬品を届けるサプライチェーンの構築が可能です。その結果、販売に係るコストが削減され、売上総利益を高い割合で継続的に得られるメリットを享受することができます。なお、脊髄損傷急性期を対象とした製品のサプライチェーンについては、現時点で当社内に営業販売体制がないことから、下図に示すように丸石製薬株式会社と東邦ホールディングス株式会社との提携により構築されています。丸石製薬株式会社は救急領域のスペシャリティファーマとして国内の救急病院をカバーする営業体制を有しているため、当該製品の販売及びプロモーションの提携をすることで、サプライチェーンを構築することが可能であると考えています。

⑥ 適応拡大

個々の難治性疾患は患者数が限られますが、複数パイプラインの開発を進めること、海外へ販売を拡大すること、他領域の疾患についても開発を進めることにより、市場の拡大が可能であると考えています。例えば、脊髄損傷急性期及びALSにおいてHGFの神経保護作用が示された場合には、脳神経領域の疾患に対しても神経保護作用を示し、治療薬として開発される可能性が考えられます。また、声帯瘢痕においてHGFの抗線維化作用が示されると、声帯以外の線維化が原因となる疾患への応用が考えられます。さらに、急性腎障害において静脈内投与でのHGFの効果が確認された場合には、腎臓以外の臓器における難治性疾患への応用の可能性が考えられます。HGFは様々な作用を持っていることから、一つの作用についての効果が確認されると、他領域への応用の可能性があると考えています。将来的には、当社において適応拡大による市場の拡大を行いながら他の製薬企業から他領域での開発を希望する提案を受けた場合には、原薬を供給することにより、継続的な収益を得ることも可能であると想定しています。

参考文献

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    The global map for traumatic spinal cord injury epidemiology, update 2011, global incidence rate. Spinal Cord (2014) 52, 110–116
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    「声帯溝症の診断治療の確立と標準化に向けたガイドラインの作成に関する研究.平成21年度総括・分担研究報告書」における国内の有病率を基に当社算出
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    KDIGO Clinical Practice Guideline for Acute Kidney Injury : Online Appendices A-F. Kidney Int Suppl 2 : 1―132, 2013.
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    Disease and Injury Incidence and Prevalence Collaborators. Global, regional, and national incidence, prevalence, and years lived with disability for 310 diseases and injuries, 1990–2015: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2015. Lancet 2016; 388: 545-602.(劇症肝炎は急性肝炎として記載)
  • *6:
    The incidence and prevalence of Huntington's disease: a systematic review and meta-analysis. 2012 Aug;27(9):1083-91.
  • *7:
    Epidemiology of chronic kidney disease: an update 2022. Kidney International Supplements (2022) 12, 7–11.
  • *8:
    移植の国際状況. 『移植』 Vol. 56, No. 2
  • *9:
    Centers for Disease Control and Prevention. Estimated Burden of Keratitis –Unites States,2010(角膜損傷は、難治性の角膜損傷として角膜潰瘍の患者数を記載)